お勧め度
原題:Suspiria
監督:ダリオ・アルジェント
脚本:ダリオ・アルジェント
ダリア・ニコロディ
製作:クラウディオ・アルジェント
音楽:ゴブリン
出演者
スージー:ジェシカ・ハーパー
サラ:ステファニア・カッシーニ
ミス・タナー:アリダ・ヴァリ
ブランク夫人:ジョーン・ベネット
マーク:ミゲル・ボセ
ダニエル:フラヴィオ・ブッチ
フランク:ウド・キア
ミリウス教授:ルドルフ・シュンドラー
パット:エヴァ・アクセン
オルガ:バーバラ・マグノルフィ
製作国:イタリア
公開:1977年(日本1977年)
上映時間:99分
あらすじ
ニューヨークからドイツの名門バレエ学校に留学する為やってきたスージー。激しい雨の中、ようやく学校にたどり着くが、玄関では入れ違いに一人の少女が何かに怯えるように飛び出し、中に向かって叫んでいた。「秘密、扉の影にアイリスが3つ、青を…」そのまま豪雨の中を走り去る彼女を見て不安を覚えるスージーだったが、その後、次々と不可解で不気味な出来事が彼女を襲い、バレエ学校の恐ろしい秘密を知る事になるのだった……
解説
今作は、ダリオ・アルジェントの名を一躍世界に知らしめた、同監督の代表作ともいえる作品です。それまでジャッロと呼ばれるサスペンススリラー系の映画を撮ってきたアルジェントにとって今作は、初のオカルトホラー作品であり、新たな境地の開拓でもありました。その背景には、「エクソシスト」「オーメン」といったオカルト映画ブームがあるのは間違いないですが、最も大きな影響を与えたのは「サスペリア2」でヒロインを演じ、公私を共にする仲になっていたダリア・ニコロディの存在です。元々オカルトに興味を持っていたニコロディは、今作の脚本にも携わっており、設定をはじめ彼女のアイデアが多く盛り込まれています。
当初はヒロインのスージー役もニコロディが演じる予定でしたが、米国の配給業者が本国で売りやすくする為に、アメリカ人の新進女優ジェシカ・ハーパーを推薦。アルジェントが今作で目指していたのは何とディズニーアニメの世界、それも「白雪姫」で、ブライアン・デ・パルマ監督の「ファントム・オブ・パラダイス」に出ていたジェシカ・ハーパーを見て、まさに白雪姫のようだと思った事から彼女に主演を依頼しました。ニコロディにはスージーの友人であるサラ役が割り当てられましたが、プライドからか彼女はそれを拒否。冒頭の空港の1シーンのみにカメオ出演しています。
ちなみに、今作で可憐な少女役を演じたジェシカ・ハーパーですが、何と当時27歳だったというから驚きです(゚ロ゚;)!。自分の中では「キャリー」で17歳の役を演じたシシー・スペイセク(当時27歳)、隠れたスラッシャー映画の傑作「アリス・スウィート・アリス」で12歳の少女役を演じたポーラ・シェパード(当時19歳)らと並んで3大ホラー映画年齢詐欺女優ですw
原色を活かした鮮烈な色彩美
今作を語る上で欠かせないのが何といっても赤や青、緑、黄色といった原色カラーで彩られた映像美です。あえてリアルな色彩から離れる事により、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだような、美しくも狂気はらんだ幻想的な世界作りに成功しています。また、アール・デコ調の装飾やカメラワークも素晴らしく、殺害シーンでありながらスタイリッシュさを感じるのはアルジェントが「鮮血の魔術師」と呼ばれる所以でしょう。さらにゴブリンによる禍々しい音楽スコアが華を添え、「サスペリア」は刺激的で革命的な作品としてホラー映画史上に名を残す名作となりました。
話題づくり
今作の大ヒットの裏には、作品の面白さはもちろん、話題づくりに様々な演出が行われました。流行語にもなった「決してひとりでは見ないでください」という秀逸なキャッチコピー。当時としては画期的だった複数のスピーカーを使用した音響立体移動装置(サーカム・サウンド・システム)の採用。映画の鑑賞中にショック死したら1000万円の保険金が支払われる「ショック死保険」。
また、冒頭のスージーがタクシーに乗るシーンで、運転手の首に不気味な顔が映っており、公開当時は「本物の幽霊が映っている」と話題となりましたが、後にこれはアルジェントが遊び心で演出したものである事が判明しています。
※ここからネタバレあり(ネタバレが嫌な方はここから下は見ないでください)
魔女三部作
「サスペリア」は後に「魔女三部作」と呼ばれる作品の記念すべき第一作目で、魔女三姉妹の次女である「溜息の母(嘆きの母)」マーテル・サスピリオルムを描いた作品です。二作目「インフェルノ」では一番年下で最も残酷な「暗黒の母」マーテル・テネブラルム、三作目「サスペリア・テルザ最後の魔女」では長女で最も美しく恐ろしい「涙の母」マーテル・ラクリマルムについて描かれています。
「サスペリア」というタイトルについて
「サスペリア」というタイトルは、サスペンスという言葉をもじった造語みたいなものと思っていましたが(いや、実際造語ではあるんですがw)、どうやらイタリアの古語でsuspiro(溜息, 嘆き)が語源のようです。要するに魔女「溜息の母(嘆きの母)」を表したタイトルだったんですね~。そもそもSuspiriaの綴りを見てもサスピリアですよね!?そういえば海外版の予告でやたらサスピ~リア、サスピ~リア言っていたのを思い出しますwというわけで、今作のタイトルは正しくは「サスピリア」です!
感想
とにかく今作は思い切った原色を基準とした幻想的な映像美。スタイリッシュにすら感じる殺害シーンと、アルジェントのセンスが遺憾なく発揮された作品だと思います。ただ、魔女を題材にしている所が少し残念ではあります。日本人は魔女っていわれても今一ピンときませんよね?悪魔と聞くと恐怖を感じますが、魔女といわれても魔女っ子や童話の悪者、ほうきに乗って空を飛ぶような、どちらかといえば魔法使いよりのイメージが先行してしまって、あまり恐怖の対象としては見ることが出来ません。ホントこればかりは文化や宗教、歴史の違いで仕方がない事ですが。
あと、魔女弱すぎ~(;゚д゚)えぇっ!?※これについては3作目の「サスペリア・テルザ 最後の魔女」で理由が明かされています。(完全に後付ではありますがw)
今作は後にリメイク作品も作られており、ヒロインを演じたジェシカハーパーも出演しています。ちなみに「新サスペリア」「サスペリア2000」「ザ・サスペリア」といった作品もありますが、今作とはもちろん全く関係がなく、また面白くもないのでお気をつけくださいませww
コメント
ダリオアルジェントの名を轟かせた傑作ホラーですよね。色彩・建造物はもちろん、最高なのはゴブリンによる音楽ですよ!好きすぎて昔の携帯電話でメインテーマを着信音にもしていましたw(同じくホラー映画好きの兄に着信音を聴かれて『何でサスペリアだよw』と突っ込まれていました)
ストーリー的には荒もあるし、意味不明なトラップ(何で針金だらけの部屋があるのか等)があったり、ラスボスがあっさり倒されたり、改めて見返すとたいして怖くないんじゃね?と思ったり…と突っ込みどころもありますが、それらを補って余りあるアルジェントのセンスが凝縮された一本ですよね。映画館で観たらインパクトがもっとすごかったろうな~と今でも思ってしまいます。
ラスボスあっさり…について、ラストのスージーの笑顔から『倒されたけど実はお前の中に入り込んでいるよ~』というオーメンのラストの笑顔的な意味深さを考えていましたが、リメイク版で実はスージーが魔女だったの展開は監督が同じ考えでいた!?と勝手にニヤニヤしました。
サスピ~リア分かります!!サスピ~リアなんですよね。併せてオープニングでスージーがタクシーに乗り込んで「アッシャーストリート」と伝えてもなかなか通じず、紙を見せて運転手が「ア~…エッシャーストリート」というところも同じ感覚です。アッシャーではなく、エッシャーなんです!!
HIDEさんコメントありがとうございます!そうそう、色彩・建造物はもちろん、ゴブリンが最高ですよね~。ロックとホラーの組み合わせは今作がはしりではないでしょうか。おっしゃる通り、ストーリー的には破綻している部分が多く荒が目立ちますが、(何で針金だらけの部屋があるのか)確かに!(笑)、アルジェントの映画は考えては駄目ですよね。感覚で見る映画ですw。ラスボスがあっさり倒されたのには「サスペリア・テルザ 最後の魔女」で、白魔女のエリザとの戦いで深手をおっていて、魔力がほとんどなくなっていた為と言及されていたので長年のモヤモヤが解消されました(完全に後付けではありますがw)