お勧め度
原題:The Mother of Tears
監督:ダリオ・アルジェント
脚本:ダリオ・アルジェント、他
製作:クラウディオ・アルジェント、他
音楽:クラウディオ・シモネッティ
出演者
サラ:アーシア・アルジェント
エンゾ刑事:クリスティアン・ソリメーノ
マイケル:アダム・ジェームズ
涙の母:モラン・アティアス
エリザ:ダリア・ニコロディ
マルタ:ヴァレリア・カヴァッリ
ヨハネス神父:ウド・キア
魔女カテリーナ:市川純
デ・ウィット:フィリップ・ルロワ
ジゼル:コラリーナ・カタルディ・タッソーニ
製作国:イタリア・アメリカ
公開:2007年(日本2009年)
上映時間:98分(ノーカット版102分)
※各国のレイティングによる
あらすじ
イタリア中部の町の古い墓地脇の工事現場から19世紀の物と思われる柩と遺品入れが発見される。教会の司祭は中身を調べてもらう為、遺品入れをローマの古代美術博物館の館長マイケルの元へと送った。
マイケルが不在時に荷物が届くが、博物館で働くサラと副館長のジゼルは好奇心から届いた遺品入れを開けてしまう。中には邪悪な魔女、涙の母(マーテル・ラクリマルム)の遺物が入っており、彼女らは調べている内に封印を解いて現代に魔女を甦らせてしまう…。
解説
ホラー映画史上に残る名作「サスペリア」、一部でカルト的人気を誇る「インフェルノ」に続く、アルジェント魔女三部作最終章「サスペリア・テルザ 最後の魔女」。前作から何と27年の時を経て奇跡の完結!
「サスペリア」の溜息の母(マーテル・サスピリオルム)、「インフェルノ」の暗黒の母(マーテル・テネブラルム)、そして今作は最も美しく恐ろしい涙の母(マーテル・ラクリマルム)について描かれています。キャッチコピーは「三度目の約束です。決してひとりでは見ないで下さい」
ダークファンタジーからリアル志向へ
今作では過去2作品で使われた、あえて現実味を失くし、夢の世界をさまよっているかのような感覚を与えるといった手法は取られておらず、リアル路線で作られています。その理由については次のような背景が考えられます。
前作「インフェルノ」が興行的に失敗し、評価も散々だった為、アルジェントはオカルト作品を撮るのを止め、得意分野であるサスペンス系の作品を取り続ける事になります。要するにオカルト系の作品作りに自信を失くしてしまったんですね~。そして27年もの間、魔女三部作は封印される事となるのですが、「マスターズ・オブ・ホラー」で「愛しのジェニファー」「愛と欲望の毛皮」といったアメリカナイズされたスプラッター描写の作品を撮って好評を得た事から「自分自身に限界がないと確信した」と自信を取り戻し「サスペリア・テルザ 最後の魔女」の製作に取り掛かる事になります。
感想のところで後述しますが、アルジェントが自信を取り戻したアメリカ的な新たな作風が今作にとっていい影響を与えたかどうかは正直微妙なところではあります。
※「マスターズ・オブ・ホラー」とは、世界のホラー映画の巨匠13人による(トビー・フーパー、ジョン・カーペンター、ジョー・ダンテ、スチュアート・ゴードン等々そうそうたる顔ぶれ!)アメリカのTVオムニバス短編ホラーです。ちなみに日本からは三池崇史が「インプリント〜ぼっけえ、きょうてえ〜」という作品で参加しています。←見ていてとっても痛いなかなかの傑作。
邦題について
邦題の「サスペリア・テルザ 最後の魔女」についてはちょっと残念な感じですね~。長いし何かピンときませんよね?そもそもテルザって何ぞや?魔女の名前か?でも今回の魔女は涙の母(マーテル・ラクリマルム)のはず?って思われる方もいるんじゃないでしょうか。
多分テルザはイタリア語で三番目という意味のTerzaからきていると思われます。正確な読みはテルツァですが、ピッツァをピザと呼ぶのと同じような意味合いでテルザとなっているのだと思います。でもちょっと響きにくいですよね。どうせならストレートに「サスペリア3」って付けたほうがよかったんじゃないかと思います。ちなみに原題は直球で「涙の母」です。
アルジェントファミリー共演
今作で主役サラを演じるのはダリオ・アルジェントの実娘アーシア・アルジェントで、そして劇中でサラの母親役を演じるのはアーシアの実母ダリア・ニコロディです。さらにサラが家族の写真を見て涙するシーンで写っている父親はダリオ・アルジェント本人でした!(多分…見間違えじゃなければ(^^;))
闇に葬り去られた幻の3作目
今作が製作される前に、実は当初3作目として製作された作品があります。出来の悪さに魔女三部作という肩書きは闇に葬り去られ「デモンズ6 最終戦争」というタイトルで別作品として発表されました。
※ここからネタバレあり(ネタバレが嫌な方はここから下は見ないでください)
感想
待ちに待った魔女三部作の最後を飾る「サスペリア・テルザ 最後の魔女」。自分は死ぬまでに見たかった作品が2つあったんですが、その1つが今作でした。なにしろ前作から27年も経っていたので、もう作られないものと半ば諦めていましたが、まさかの製作で、出来云々以前に作られただけでも嬉しく思います。
ちなみにもう1つは同監督の「4匹の蝿」です。アルジェントの作品中、国内で唯一ソフト化されていなかった作品で、翻訳はありませんが最後の手段で輸入版を購入して見ようかと思っていた作品です。こちらも「歓びの毒牙」「わたしは目撃者」に続く、「動物三部作」と呼ばれる作品の最終作で、日本公開より何と37年の年月を経て遂にソフト化されたので見る事が出来ました!
「サスペリア・テルザ 最後の魔女」の感想に話を戻しますが、実は正直言いまして、あまり覚えていませんでした…(゚д゚)数回は見ているはずなのに…。という事は印象に残らない作品という事ですね~。はっきり覚えているのは初見の時に「コレジャナイ」と感じた事と、日本人魔女の奇天烈さ。でもそれでは感想が書けないので、もう1度見直しました!
見直してみると記憶にあったほど悪くもありませんでした。初見の時は期待し過ぎちゃったんでしょうね~。「コレジャナイ」と感じたのは、過去2作品と比べて作風が変わった事です。過去2作品はファンタジーが意識されており、夢の中にいるような現実味のないフワフワした感覚が魔女という題材にとてもマッチしていたのですが、今作ではそれがなく、また、原色を用いた演出も極力抑えたリアル路線で作られているんですね。アメリカナイズされた現代風の作風とでもいいましょうか。
解説の方でも先述させて頂いた、アルジェントがアメリカで作品を作った際に感じた手応えは、「新境地を切り開いた」というよりも「普通っぽい作品(一般受けするような作品)も撮れる」という事で、その反面、本来の持ち味を失くしてしまっているようにも感じてしまいます。なので、コアなファンからしては物足りませんが、一般的にはもしかしたら受け入れやすいのかもしれません。
日本人魔女については、やっぱり際立ってましたね~!奇抜なメイクに味噌っ歯で、どことなく鳥居みゆきを思わせる表情wなぜか「チョトマテ」ってカタコトの日本語(その後のシーンでは流暢な日本語を話しているのに)。しかも雑魚魔女達の中ではリーダー格っぽい扱いでそれなりに出番があり、カテリーナという名前も持っています。カテリーナを演じたのはイタリアで活躍中の日本人で市川純という実はとってもお綺麗な方です。
魔女カテリーナ
市川純
短い登場時間でも凄まじいインパクトだったので、もう少しカテリーナの退場が遅ければ完全に涙の母ラクリマルムの存在感は食われてしまっていた事でしょう。(涙の母は涙の母で印象薄すぎw)
今作、掴みは結構いい感じなんですよね~。オープニングでの悪魔の絵画にオーメンのようなオカルティックな音楽。掘り起こされた邪悪な遺品と言い伝え。封印を解いてしまった事から腹を切り裂かれ、引きずり出された自分の腸で首を絞めて殺害される最初の犠牲者。
魔女の復活によりローマ中に巻き起こる災い。母親が突然赤ちゃんを川に投げ込んだり、犯罪や自殺者が頻発。そして世界中から魔女がローマに集まってくる…のですが、このあたりから少し雲行きが怪しくなってきます。というのも集まってくる魔女が揃いも揃ってパンクのような装いで、下品で頭が悪く、やる事といったら奇声を発して周りの人を威嚇したり、荷物を蹴り飛ばしたりと、魔女と言うよりその辺にいそうな小悪党のような感じなんですよね~。実際、魔女らしき力を見せたのはカテリーナさんだけでしたし。
その後、主人公のサラが霊媒師や神父、錬金術師らの助言を受け、自分の母親が白魔女だった事や、自分にも魔女に唯一対抗できる強力な力が潜在している事を知り、魔女との対決となるわけですが、まず、途中で助けにきてくれるママンの霊がお粗末すぎ~。安っぽいCGで妙に浮いているというか、とにかく興ざめする程の出来の悪さ。実は個人的に今作で1番気になる所だったりします。
後はラストのあっけなさ。槍で赤い法衣を剥ぎ取られたとたん魔力を失い、イヤ~ン的なポーズでうろたえ、そのまま自滅する涙の母マーテル・ラクリマルム。その時、誰もが思ったはずです「サラ、秘められた力って使わないの?」と…。白魔術と黒魔術で「スキャナーズ」のような壮絶な対決が見たかったと思うのは自分だけではないはずです。
まぁラストはあっけなく、いきなり終わるのが魔女シリーズの伝統なので、そこについてはあまり言及しませんw
でも、そもそも涙の母マーテルに対抗しうる潜在能力を持ち、その事から魔女に付け狙われていたはずなのに、全くといっていいほどその力は使用しておらず、途中ちょこっと姿を消したくらいで、後は体術勝負!(オィオィ設定活かしていこうぜ~…)
扉の開閉だけで相手の頭蓋骨を粉砕する怪力!初めて手にしたであろう槍で、服だけを剥ぎ取るという離れ技を披露!サラあんた一体何者!?と、好きなだけに気になる点を色々述べさせて頂きましたが、もちろん良かった点もあります。
「サスペリア」の溜息の母があっさりとスージーに倒されたのは、優れた白魔女であったサラの母親エリザが戦いで深手を与えており、魔力がほとんどなくなっていた為だった事が明らかにされましたし(後付ではありますがwまた、どうせなら暗黒の母の最後についても明かにして欲しかった~w)、錬金術師デ・ウィットが取り出した本は「インフェルノ」に出てきた「三母神」で、ファンにとってはニヤリとさせられるシーンでした。正直、これらのシーンと三作目が実現した事だけでもファンにとっては満足です。
後は、以前の美的描写と異なりリアル描写のグロさがあるので賛否が分かれるかとは思いますが、ゴアシーンにはかなり力が入っています。
腹を切り裂かれ、引きずり出された自らの腸で首を絞められる。ドアに頭を挟み何度も開閉して脳ミソが流れ出すまで潰す。目潰し専用器のような物で両目を潰される。女性の陰部に槍を突き刺し口から貫通させる。等々。
また、母親が橋の上から乳児を投げ捨てたり、自分の息子を肉切り包丁で刻んだり、子供が内臓を食われたりと、子供や赤ん坊まで容赦がありません(||゚Д゚)ヒィィィ!
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