サスペリア2

お勧め度4.7

原題:profondo Rosso
監督:ダリオ・アルジェント
脚本:ダリオ・アルジェント
   ベルナルディーノ・ザッポーニ
製作:クラウディオ・アルジェント
音楽:ゴブリン
   ジョルジオ・ガスリーニ
出演者
マーク:デヴィッド・ヘミングス
ジャンナ:ダリア・ニコロディ
カルロ:ガブリエレ・ラヴィア
ヘルガ:マーシャ・メリル
アマンダ:ジュリアーナ・カランドラ
ジョルダーニ:グラウコ・マウリ
マーサ:クララ・カラマイ
オルガ:ニコレッタ・エルミ

製作国:イタリア
公開:1975年(日本1978年)
上映時間:106分(完全版126分)

公開35周年記念ジャケット

公開35周年記念ジャケット2

あらすじ

ある超心霊学会で、テレパシーの持ち主であるヘルガの講演が行われていた。彼女は参加者の名前やポケットの中身を当てて驚かせたが、その場に居合わせた殺人者の脳裏も読み取り見つけてしまった事から、その夜犯人に襲われてしまう。

偶然、ヘルガが襲われるところを目撃したピアニストのマークは慌てて現場に駆けつけるが、彼女はすでに息絶えており、犯人の姿もなかった。マークは現場に妙な違和感を覚えるがそれが何か思い出せない。それを払拭するためマークは女性記者のジャンナと共に事件を追い始めるが、それを妨げるかのように彼の周囲で連続殺人が発生していく。

解説

記念すべき投稿第1作目は迷わず「サスペリア2」をご紹介!サイト名の「深紅」やハンドルネームからもお分かりかと思いますが、自分が最も好きな恐怖映画は「サスペリア2」です。ホラー映画好きになったのはこの作品の影響といっても過言ではありません。

今作は自分が小学校低学年くらいの時に家族で映画館で見た作品でして、(ファミリーで映画見に行くのに何というチョイス( ̄□ ̄;)!!)もうただでさえトラウマ級の怖さと名高い今作を幼少期に見たので、その破壊力たるや・・・殺人が行われる前に不気味な子供の歌がかかるのですが、しばらく頭から離れなかった覚えがあります。今でこそ名作を劇場で見れた事に感謝していますがw

さて、本題に入りますが、今作は「ホラー映画の帝王」「鮮血の魔術師」「イタリアのヒッチコック」といった異名を持つダリオ・アルジェント監督の代表作品の一つで、知名度では「サスペリア」に劣りますが、個人的にはこちらがアルジェントの最高傑作だと思っています。

アルジェントとヒッチコック
ダリオ・アルジェントはサスペンス映画の神様アルフレッド・ヒッチコックの影響を強く受けており、今作のイタリア版のポスターがヒッチコックの「めまい」に酷似している事や、「DO YOU LIKE HITCHCOOK? ドゥー・ユー・ライク・ヒッチコック?」というオマージュ作品を作っている事からもそれがうかがえます。

「めまい」のポスター

「サスペリア2」のイタリア版ポスター

タイトルの過ち
有名な話ではありますが、今作「サスペリア2」というタイトルですが、「サスペリア」とは全く関係がありません。それどころか、「サスペリア」よりも以前に作られた作品なんですね。「サスペリア」が大ヒットした為、配給会社が「続編として公開したほうが売れるんじゃね?」って感じで適当につけられたタイトルです(゚Д゚ll)

昔は結構こういう事が普通にあったんですよね~。売る為の話題作りというか、奇策というか、詐欺というかw例えば、本物のスナッフフィルムだといってみたり(食人族)、殺人鬼が実在していて現在も指名手配中だといってみたり(バーニング)、ポスターに出ているシーンが全くなかったり※女性が逃げ惑う描写を何と日本の配給会社の社員で撮影して合成(バーニング)、絶叫で声帯や鼓膜が傷ついた際の「絶叫保険」をうたってみたり(バーニング)、あ!「バーニング」さん三冠王ですねwwwいや~今考えると何でもありで良い時代でした。

「サスペリア2」の正式名(原題)は「Profondo Rosso」で、英語では「Deep Red」、日本語に直訳すると「深紅」となり、後に日本でDVDが発売された際には「サスペリアPART2/紅い深淵」のタイトルになっています。

ジャッロという映画ジャンル
「サスペリア」が魔女を題材にしたオカルト映画なのに対し、「サスペリア2」はイタリアで「ジャッロ(ジャーロ)」と呼ばれるジャンル(残酷シーンや性描写等を過激に表現したサスペンス映画と考えて差し支えないと思います)の作品です。

特殊な能力を持った殺人鬼やゾンビ、幽霊などは一切出て来ませんが、容赦のない殺人描写に不気味な演出、恐怖感を伝える独自のカメラワークやゴブリンによる緊張感と不安感を煽るBGMなど、ホラー映画以上にホラーなサスペンス映画です!さらに大胆かつ衝撃の大仕掛けがあるので二度見必至!

また、今作は色彩、視点、構図など、全てが素晴らしく、恐らくアルジェントの美的センスが最も発揮されている作品ではないかと思います。例えば冒頭の街並みに出てくるカフェはアメリカの画家エドワード・ホッパーの「ナイトホークス」を参考にセットで再現されたもので、よく見るとガラス越しに見える店内の客たちはほとんど身動きしておらず、まるで絵画を見ているかのような錯覚に陥ります。そうした静のシーンから突如一転してヘルガ殺害の動のシーンへ移り変わる見事な演出。こういった所も見所です。

ちなみにヒッチコックも同じくエドワード・ホッパーの「線路わきの家」にインスピレーションを受けて名作「サイコ」を製作しており、ノーマン・ベイツが住む古い館がまさにその絵画にそっくりです。

あと豆知識としては、今作を含めアルジェントの映画には黒い革手袋 をした殺人鬼の手がよくクローズアップされるのですが、これはほぼアルジェント本人が演じています。

「約束です! 決してひとりでは見ないで下さい」のキャッチコピーも秀逸でした。※本当に秀逸なのは「サスペリア」のキャッチコピー(「決してひとりでは見ないでください」)で、それに「約束です!」を加えただけですがwちなみに「サスペリア・テルザ 最後の魔女」のキャッチコピーは「三度目の約束です。決してひとりでは見ないで下さい」となっておりますww

劇場公開版と完全版
今作には劇場公開のオリジナル版と、約20分も長い完全版があるのですが、個人的にはオリジナル版をお勧めします。というのも、完全版で追加されたシーンはどうでもいいような主人公とヒロインのコミカルな会話シーンが大半で、恐怖シーンや本編にかかわる重要なシーンなどは一切増えていないからです。無駄に長くなってテンポが悪くなってしまっています。極端に言えば、編集の時点でカットされた不要なシーンを追加しただけ、逆に言えば編集されていない不完全版とも感じてしまいます。(言い過ぎかもしれませんが、大好きな作品だけにハッキリ言わせていただきました!)

※ここからネタバレあり(ネタバレが嫌な方はここから下は見ないでください)






感想

思い出補正もあるかもしれませんが、とにかく今作は最高です!不可解な冒頭のクリスマスの殺害シーン、耳から離れない子供の歌、自分が目撃者になったかのようなカメラワークのヘルガ殺害シーン、アマンダの首つり人形に焼けただれた顔とダイイングメッセージ、無垢で邪悪な雰囲気をかもしだすオルガ、幽霊屋敷の不気味な壁画(超お気に入り!)、ジョルダーニのカラクリ人形と執拗な机の角打ち付け、カルロの無残な事故死、ラストのクビチョンパ、それらを盛り上げるゴブリンのBGM、そしてホラー史上に残る大胆なトリック!たまりません!

そういえば昔から映画で2点どうしても気になる事があって、その1つが今作のダイイングメッセージでした。一体何が書かれているのか?その意味は?同じような事を思う人が多かったようで、色々議論されてきましたが、2013年に発売された、「サスペリアPART2日本公開35周年記念究極版Blu-ray」に付属した冊子の解説にて判明しました。書かれている文字はイタリア版では「E STATO」、英語版では「IT WAS」で、どちらも「それは」という意味です。「それは」の後にも言葉は続いているのですが、画面には映らないので観客にはわかりませんが、ジョルダーニには見えているといった設定です。

ちなみに今作とは全然関係ありませんが、もう1つの気になる事も解消されているのでついでに記述させて頂きます。リドリー・スコット監督のSF映画の傑作「ブレードランナー」に出てくるデッカード(ハリソン・フォード)が屋台で何かを「四つくれ」と注文して、店主に「二つで十分ですよ!」と言われるシーンがあるのですが、これも画面に映ることはなく、何が二つで十分なのかファンの間で長年議論されてきました。これは2007年に発売された「ブレードランナー製作25周年記念アルティメット・コレクターズ・エディション(5枚組みDVD)」の中の1枚、試写用のワークプリント版によって、デッカードの食べていたのは「魚丼」で、丼にのせる魚の数が二つ(二匹)で十分ですよ、であった事がついに明らかにされました。

サスペリア2に話を戻しますが、今作は何とゾンビ映画の巨匠、ジョージ・A・ロメロ監督によってリメイク(しかも3D)が決定していたのですが、諸事情により流れてしまいました。絶対にオリジナルを超えるような事はなかったと思いますが、ロメロが今作をどう料理するのかちょっと見てみたかったような気もします。

コメント

  1. アルジェント監督作品としては、サスペリア・サスペリア2・フェノミナの3作がベスト3と思っています。次点で歓びの毒牙・私は目撃者・シャドーあたりですかね… インフェルノはまとまりなし、オペラ座血の喝采やトラウマは中途半端なイメージです。
    バーニング三冠王は確かに!と笑ってしまいました。当時は何でもありでしたからね…劇中には全く出てこない武器を大々的に扱って『ジョギリショック』なる迷文句を作ったサランドラ、全米放映中止!という過大広告を謳ったサランドラなど(こちらは2冠王ですね)もありました。
    70年代後半~90年代前半は玉石混合のホラー映画が多数制作されましたが、そういった中から当たりを見つけた時の楽しさ・嬉しさも大きかった時代だと思います。

    • コメント頂きありがとうございます。ベスト3、次点共に全く同意見です。やっぱり初期のジャッロ作品は面白いですよね。あとは動物三部作の一つ4匹の蠅や、原点回帰を狙ったスリープレスなんかも好きです。オペラ座血の喝采は完全版ならギリ次点入りですかね。オリジナル版は重要なシーンがカットされてて話が繋がらない程酷かったです。話は変わりますが2022年製作のダークグラスは久しぶりの新作に少しだけ期待しましたが酷い出来でした。ところどころらしさはあるんですけどね・・・

      「ジョギリショック」懐かしいですねw放映中止をうたったり実話と騙ったり、とにかく注目を引く為には何でもありの、ある意味良い時代でした(笑)

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